安全衛生優良企業公表制度評価基準の解説②

第2 企業の取組として満たしていることが必要な項目(必要項目)

1 安全衛生の実施体制の取組※取組を確認するもの

①各事業場(10人以上の事業場)に従業員の健康や安全を担当する組織があるか、又は担当者を置いているか、また、企業本社には、全社的な健康や安全を担当する組織又は担当者を置いていること
(例)安全管理者及び衛生管理者、又は安全衛生推進者の選任
(例)本社に安全衛生課の設置
(例)本社人事労務部に安全衛生担当の職務分担がある

(提出資料(例))
申請企業の全ての事業場及び企業全体における安全衛生管理に関する体制図及びそれぞれの従業員の健康や安全を担当する組織又は担当者の事務分掌等を記載した書面

(解説)
安全衛生優良企業は、安全管理や健康管理について企業全体として安全衛生のPDCAサイクルによる取組がなされていることが必須として求められる。第2の1の各項目は、主にそのような取組を行うための体制が企業全体として構築されていることを確認する。
なお、以下、第2、第3の評価項目においてPDCAに基づく取組を確認するものがあるが、ここでの「PDCA」とは具体的な計画の策定、それに基づく措置、措置状況の管理・分析、分析結果に基づく次期計画への反映の一連の流れが組織的に行われていることをいい、計画の内容そのものよりも、例えシンプルな計画であってもPDCAサイクルにより着実に自律的な改善が行われていることを重視・評価するものである。各組織又は担当者が実際にどのような実務に携わっているかについては、次の②で確認する。
本項目は、具体的には、安全衛生管理に関する体制図等により、申請企業の全ての事業場(従業員数が10人未満の事業場は除く)において、従業員の健康や安全を担当する組織又は担当者が選任されていることを確認するものである。例のとおり、法定の安全管理者や衛生管理者、安全衛生推進者が適正に選任されている場合には本項目は満たすものとする。

(参考)
JISHA方式OSHMS基準3(1)に相当
GSC中小評価事業評価項目2(1)に相当
COHSMS認定基準1-3(2)(4)に相当

② ①の従業員の健康や安全を担当する組織又は担当者は、労働災害の発生状況や各種の安全衛生に関する計画の実施状況を継続的に把握し、問題点があった場合には、事業場内(企業内)で情報を共有した上で、必要な対策を検討するようになっていること
(例)安全衛生委員会で各種計画の進捗を報告し、担当部署が策定した見直し案を審議している

(提出資料(例))
企業の全ての事業場における法定の安全衛生委員会等での会議資料及び当該会議の結果を踏まえた社内の回覧資料等

(解説)
本項目は、①の組織又は担当者が、従業員の健康や安全に係る実務を実際に行っているか、体制が機能しているかを確認するものである。
安全衛生委員会等の設置義務対象外の小規模事業場の場合、事業場単位で会議体形式の組織が設けられていなくとも、企業全体として当該事業場を含めた従業員の健康や安全のための取組が組織的に進められていることが確認できれば、本項目を満たすものとする。

(参考)
JISHA方式OSHMS基準11(1)~(3)、12(1)~(4)に相当
GSC中小評価事業評価項目5(4)~(5)に相当
COHSMS認定基準1-2(1)、1-3(5)、1-13(1)(2)、1-14(1)(2)に相当

③各事業場に健康や安全に関する責任者を任命していること
(例)○○部長(安全衛生の責任者としての職務分担あり)
(例)総括安全衛生管理者の選任

(提出資料(例))
申請企業の全ての事業場及び企業全体における健康や安全に関する責任者の事務分掌等を記載した書面

(解説)
本項目は、①の従業員の健康や安全を担当する組織や担当者任せにせず、従業員の健康や安全に関してしかるべく責任者が関与する体制があることを確認するものである。①の体制図や事務分掌等により、個々の事業場単位だけでなく、全社的に体制が構築されていることを確認する。

(参考)
JISHA方式OSHMS基準3(1)、(3)~(4)に相当
GSC中小評価事業項目2(1)、レベル評価項目1~6の問1に相当
COHSMS認定基準1-3(1)(2)(4)に相当

2 安全衛生全般の取組※取組を確認するもの

①企業のトップが従業員の健康や安全の確保を重視する方針を明文化していること
(例)「安全・健康宣言」として明文化したものを、企業トップの職名により策定している
(例)経営会議、役員会議、労使協議会等の場を活用し、企業全体の合意形成を行った上で作成した

(提出資料(例))
企業のトップによる安全衛生に関する方針を明示した書面

(解説)
安全衛生優良企業は、安全管理や健康管理について企業全体としてPDCAサイクルによる取組がなされていることが必須として求められる。第2の2の各項目は、主に安全衛生についての方針が策定されていることや全社的な情報共有がなされていることを確認するものである。
本項目は、企業のトップが定めた従業員の健康や安全の確保を重視する方針が明文化されていることを確認するものである。ここでは、そのような方針が企業のトップの関与のもとで策定され、明文化されていること自体を確認するものであり(従業員に対する周知等を行っているかどうかは次の②で確認する。)、文書の形式は問わない。具体的な資料としては、例えば下記のようなものが確認できれば、本項目を満たすものと認められる。
・トップの方針がメール等により配信されている場合は、当該メールの写し
・企業のトップが参加する委員会等において従業員の健康や安全の確保を重視する方針の決定がなされている場合は、当該委員会等の会議資料や議事録など
・企業のHPにトップの方針を公開している場合は、その該当ページ。

(参考)
JISHA方式OSHMS基準1(1)~(4)に相当
GSC中小評価事業評価項目1(1)~(2)に相当
COHSMS認定基準1-1(1)(2)に相当

② ①の明文化した従業員の健康や安全の確保を重視する方針を従業員に周知、共有していること
(例)従業員がいつでも閲覧できる社内掲示板に掲載(例)方針を全従業員にメール配信

(提出資料(例))
従業員への周知の実績が確認できるもの。

(解説)
本項目は、①の方針が従業員に対して適切に周知、共有されていることを確認するものである。従業員への周知の実績が分かるものであれば形式は問わず、例えば社内の掲示板への掲示、メールによる配信、社内のイントラネットの掲示板への掲載などの周知の実施状況が確認できれば、本項目を満たすものと認められる。
提出資料としては、掲示板の写真、メールを印刷したもの、イントラネットの掲示板のスクリーンコピーなどがある。

(参考)
JISHA方式OSHMS基準1(5)に相当
GSC中小評価事業評価項目1(3)に相当
COHSMS認定基準1-1(3)に相当

③全社的な従業員の健康や安全の取組についての計画策定や見直しの際に従業員(従業員の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては、労働者の過半数を代表する者)の意見を反映させていること
(例)計画策定や見直し時に労使協議会で議題にしている
(例)労働組合の代表者が参加する中央安全衛生委員会で各種計画の策定、見直し案の調査審議

(提出資料(例))
各種計画策定や見直し(以下「計画策定等」という。)の際、従業員の意見が反映される仕組みとなっていることが確認できる書面。例えば、労使の協議会の議事次第や議事録など。

(解説)
本項目は、全社的な従業員の健康や安全の取組についての計画策定等の際、従業員の意見が適切に反映される仕組みとなっているかどうかを確認するものである。なお、常時意見箱を設置しているなどの漠然とした意見募集を行っているだけの場合には本項目を満たすものとは認められず、具体的な提案や取組について労使間での協議が行われていることが求められる。

(参考)
JISHA方式OSHMS基準2(1)~(4)、3(7)に相当
GSC中小評価事業レベル評価項目6に相当
COHSMS認定基準1-2(2)に相当

④企業のトップ(幹部)に次の項目について報告していること
(例)安全衛生担当部署が企業の担当役員宛てに報告書を作成、提出している
(例)本社の中央安全衛生委員会で報告を行っている
ア企業全体の労働災害の発生状況(労働災害が発生している場合)
イ発生した労働災害の再発防止対策(労働災害が発生している場合)
ウ各種安全衛生に関する計画の進捗状況
エ企業全体の労働時間の状況

※企業全体の職場ごとの時間外労働の状況といった統計的なものなど
オ企業全体の従業員の健康状況
※企業全体の健康診断結果に基づく有所見の状況といった統計的なものなど

(提出資料(例))
企業のトップ(幹部)に対して各項目に係る報告が少なくとも年1回以上なされていることが確認できる書面

(解説)
本項目は、企業のトップ(幹部)が企業内の従業員の健康や安全に関して必要な対応ができるよう、適切に状況を把握できる仕組みとなっていることを確認するものである。アからオまでの各項目に関し、企業のトップ(幹部)が年1回以上、従業員の健康や安全に係る企業の全体像を把握できる仕組みとなっていることが確認できれば、本項目を満たすものと認められる。(「企業のトップ(幹部)」には、申請企業において安全衛生を担当する役員なども含まれる。)
なお、ここでは企業全体の従業員の健康や安全に関する傾向や状況把握に重きをおいており、個別の従業員の労働時間や健康状態を網羅的に把握することまでは求めていない。
提出資料としては、企業のトップ(幹部)に対して報告書が提出されている場合には当該報告書の写し、企業のトップ(幹部)が参加する安全衛生委員会等の場で報告が行われている場合には当該委員会等の議事録等が考えられる。なお、アからオの各項目に関する報告内容が確認できるものとなっていれば、必ずしも従業員の健康や安全に特化した形である必要はない。

⑤次の項目について、従業員が容易に状況を知ることができるようになっていること
(例)企業内の災害発生状況、再発防止対策、安全衛生の取組状況をとりまとめた年間レポートを全ての従業員が閲覧できる社内のWEB掲示板に掲示している
ア企業内の労働災害の発生状況(労働災害が発生している場合)
イ発生した労働災害の再発防止対策(労働災害が発生している場合)
ウ各種安全衛生に関する計画の内容及び進捗状況また、次の事項については、従業員ごとに、情報を通知していること
エ従業員ごとの労働時間の状況
※適正に把握された労働時間
オ従業員ごとの健康診断の結果

(提出資料(例))
アからウまでについては、申請企業の従業員が各項目に関して、容易に状況を確認することができるようになっていることが確認できる書面エ及びオについては、申請企業の従業員に対し、各項目についての情報が適切に通知されていることが確認できる書面

(解説)
本項目のうちアからウまでは、企業の健康や安全に関する取組の情報を従業員自身が容易に知ることができるよう、申請企業において、そのような情報が従業員に対して適切に開示されていることを確認するものである。アからウまでの各項目について年1回以上の頻度で適切に更新された情報が、当該企業に属する従業員がいつでも閲覧できる形で提供されていれば形式は問わず、例えば社内の掲示板への掲示、メールによる配信、社内のイントラネットの掲示板への掲載など適切に環境が整備されていることが確認できれば、本項目を満たすものと認められる。なお、アからウまでの各項目に関する報告内容が確認できるものとなっていれば、必ずしも従業員の健康や安全に特化した形である必要はない。提出資料としては、衛生委員会等の議事録又は安全衛生部署で作成した社内レポートが、社内のイントラネットの掲示板で共有されている場合は、そのスクリーンコピーなどがある。
本項目のうちエ及びオについては、個々の従業員の労働時間や健康状況を申請企業が適切に把握するとともに、各従業員にその情報を通知していることを確認するものである。具体例としては、エについては、例えば社内のイントラネット上で超過勤務を含む労働時間が管理されており、従業員各人が自らの労働時間を確認できるようになっている等、オについては、例えば定期健康診断結果をそれぞれ従業員に対して適切に通知している等がある。提出資料(例)としては、従業員に通知していることが確認できる書面や社内のイントラネットのシステムの概要を説明した書面などがある。

(参考)
JISHA方式OSHMS基準3(7)、9(6)~(7)
(④ウに関するもののみ)GSC中小評価事業評価項目5(3)

⑥安全衛生教育に関する実施計画を策定し、実施していること(労働安全衛生法に定める雇入れ時教育や特別教育も含む)
(例)安全衛生教育の種類ごとに、教育対象、実施時間などを定めた年間計画を策定し、進捗管理を行っている
(例)全社的な実施計画を策定し、本社で一括して実施、進捗管理している
(例)各事業場ごとに実施計画を策定し、実施状況を本社に報告している

(提出資料(例))
申請企業内での安全衛生教育に関する計画の内容及び当該計画に基づく過去3年間の教育の実施状況が確認できる書面
社内の規程等で新規採用者等に対する教育プログラム等があり、安全衛生教育に関する事項が含まれている場合はその写しなど

(解説)
本項目は、労働安全衛生法に定める雇入れ時教育、特別教育、職長教育も含め、従業員に対する各種の安全や衛生に関する教育が計画的に実施されていることを確認するものである。申請企業の全ての事業場の従業員を対象として適切に安全衛生教育が計画されており、かつ当該計画に即して安全衛生教育が適切に実施されていることが確認できれば、当該計画自体は企業全体で作成されているものか事業場単位で作成されているものかは問わない。また、必ずしも安全衛生教育に特化した計画である必要はなく、実施計画が含まれているものであれば差し支えない。
なお、計画に基づく教育の実施状況としては、申請から少なくとも直近1年間の安全衛生教育の実績を確認するが、期間内には対象者がいなかったために実績としての記録が存在しないことも考えられる。そのような場合には、安全衛生教育に関する計画の中で教育の実施時期や項目等(例えば入社○年目には○○の項目について実施等)が定められており、過去、当該計画に即して安全衛生教育が適切に実施されていることがいずれかの書面(様式等は不問)により確認できれば、本項目を満たすものと認められる。

(参考)
JISHA方式OSHMS基準8(4)、9に相当
GSC中小評価事業評価項目5(2)オ、9エに相当
COHSMS認定基準1-10(2)、1-11(2)に相当

⑦厚生労働省のあんぜんプロジェクトに参加するなど、自社の安全衛生の取組の見える化(外部に公開)を行っていること
(例)CSR報告書に企業の安全衛生活動の状況について記載している
(例)企業のHPに安全衛生活動の状況について公開している
(例)あんぜんプロジェクトに参加している(労働災害発生率の状況を含め、安全情報を公開)

(提出資料(例))
安全衛生の見える化の取組の実施状況が確認できる書面

(解説)
本項目は、申請企業が自社の安全衛生の取組について、対外的な情報発信を実施しており、求職者等の外部の者が申請企業においてどのような取組がなされているかを知ることができるようになっていることを確認するものである。例示のとおり、CSR報告書への記載や申請企業のWebサイトへの掲載など発信している情報の形式は問わず、かつ安全衛生の取組に特化したものとなっている必要はない。